株式会社新潟クボタ社長ブログ

9月26日雑感

9月17〜19日、23〜25日のそれぞれ三連休を終えて、新潟県内のお米の収穫作業は平野部では一段落したようです。今年は7月末の集中豪雨の被害が心配されたものの、今のところ最小限にとどまっているようです。まずは、収量は平年並みというところでしょうか。
 お米の品質のほうですが、今年は今のところ大変よい状況ではないかと思います。早生は一等米比率はほぼ100%でした。コシヒカリにはやはり高温障害の影響が一部に見られたものの、一等米比率は70〜80%で推移しているようです。昨年は一等米比率が30%くらいに低下して新潟県稲作農業にとって試練の年でした。そこで今年は二年続けてこんなことはできないと官民あげて、土作りや栽培管理など品質向上に取り組んできました。その成果が発揮できたのではないかと喜んでいます。
 さらに加えて食味値が大変高いのが、今年の特徴です。食味計という機械があり、食味を左右するといわれるたんぱく質含有量、でんぷんの組成、乾燥度合いなど総合的に分析して食味値を測定するのですが、それによると今年は例年よりも高い値が今のところ出ているようで、消費者の皆様にもおいしく召し上がっていただけるものと思っています。
 農家の皆様にとっては、このところ低下傾向にあったお米の値段が少し持ち直し、一安心というところではないでしょうか。そして一番心配していたセシウムがまったく検出されなかったことは県全体にとってもよかったものと思います。
 今一番恐ろしいのは「風評被害」です。いつのころからこの言葉が使われるようになったのでしょうか。高度情報化社会になり、同じ情報が何度もTVなどで流され、一瞬の間に「心配」が定着されてしまう。また、日本全体が大変豊かになり、ほとんどの食べ物に「代替物」がある。
 現代人にとって、支配的な価値観のひとつに「安全・安心」があります。安全は一定の基準の内外の問題ですが、安心は納得の世界です。しかしこの二つは常にセットにして論じられる。そこにちょっとした善意に基づく「配慮」が加わる。流通関係者は一応心配されるといやだからと棚からはずす。消費者のためという善意が市場からの締め出しに一気につながってします。何度同じ光景を見たことでしょう。
 この「風評被害」という巨大な現象に対するには、やはり体系的な数値など「情報を正確」に「発信し続ける」こと以外にはないと思われます。新潟県など行政関係機関が、県内のお米をはじめ多くの農産物を定期的に検査し続けてきちんと公開してきたことは大きな効果があったのではないかと思っています。
 もうひとつ私が個人的に感じていることが、現代社会は食の流通サイクルがあまりにも巨大になりすぎているのではないか、ということです。全国規模はもとより、まさにグローバル化しています。もちろん国民の生命を守るために、絶対量を確保するためには当然のことなのですが、私はこの「ラージサイクル」を補う「食のスモールサイクル」といったものが改めて必要とされているのではないかと感じるのです。もっと身近に、目に見える形で食材が提供されれば、獏とした不安に動揺されることも少なくなるのではないかと思うからです。 
 稲刈りは、これからは棚田など山間部に移ります。棚田には、コシヒカリの黄金色が本当に映えるのです。この時期は県内各地を飛び回っていますが、しばしコシヒカリの稲穂の色の美しさに見とれることがあります。農業生産現場と食卓がもっと近づき、農家の汗が、食卓の幸福にそのまま結びつく、こんな当たり前のことがこれからも当たり前のように続くことを祈りたいと思います。
 今日は最後に、コシヒカリ生みの親である「国武正彦先生」の短歌を紹介して終わりたいと思います。私の社長室に掲げているものです。

木枯らしが吹けば色なき越の国
          せめて光れや稲コシヒカリ